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| 01.親父の「ぼやき」 11月19日 19:00 | コメント(0) |

- 頭で酒を飲む話

 恥ずかしい話だが、利き酒をして銘柄を当てることを友人と数回行っていつも私は最下位のほうになってしまう。「籠太の親父らしくない」という冷ややかな視線を感じてしまう。酔った意気まで罵倒するが如く露骨に言うやつまで現れる。生意気な女が娘の如くの口調で、「信じらんない~!」なんてことを言いながら、俺のほうを侮辱の眼差しで見ていることもあった。
 利き酒は俺には恐怖だ、正直言おう俺は酒の味はよくわからない、どうもあの舌先でずるずるやるあの利き酒は苦手だ。
 まだ美味しい日本酒との出会い、その魅力にのめり込みかけている頃、はっと考えた。俺は酒を舌で味わってないんじゃないだろうかと・・・どうも前頭葉のあたりで飲んでいるような気がしてならない。そんな事を利き酒の席で言うと益々馬鹿にされてしまった。しかし馬鹿にされようがなんだろうが、俺には確信があった。
 頭で飲んだほうが解る事だってある、最近は飲んでいるうちに蔵の事情がほとんどその蔵に行かなくても見えてくるような気がしている。後でその蔵に行ってみると予想はほとんど当たっている。

| 02.親父と「出会い」 11月08日 16:24 | コメント(0) |

- トメさんとの約束

 トメさんは取引を始めた湯野上温泉の駅前、渡辺酒食品店のかあちゃんである。トメさんも先年亡くなった。トメさんはよく電話で注文すると注文を間違えた。電話に出ると素朴な声で、『モスモス渡辺です』と激しくなまっていた。徳さんにその声を真似て聞かせて大笑いした事がある。
 葬儀の席でトメさんの遺影にこういって別れを告げた。
 「トメさんあんたとの約束は果たしたよ・・」
 取引が始まり、まもなく湯の上の渡辺酒食品を訪れてみた。今夜は泊まって酒でも飲んでけれと言われ、利き酒のつもりがすっかり酔ってしまった。
 「必ず徳さんの酒が売れるようにしてみせる」これがトメさんとの約束であった。もちろん私が彼の今の繁盛を作ったわけではない、徳さんの努力の賜物以外の何者でもない。しかし当時私も徳さんも貧しかった。相変わらず私の店には客は来ないし、湯の上の徳さんのお酒もあまり売れなかった。
 冬、お店のスト-ブの前で暇な二人はどうしたらこのいい酒が売れるようになるか。
どうしたらお客様がきていただけるか、そんな話ばかりしていた。時間だけが過ぎていった。

| 02.親父と「出会い」 10月27日 17:23 | コメント(0) |

- 俺頭おかしいのだろうか

 昔、10数年間の話だが俺も苦しい時代があった。勇んで会津に懐石料理の店を出したはいいが、お客が来ないのである。来る日もくる日も猫さえもこないのだ。
 そんなある日、一人の若者が酒屋の前掛けをかけていきなり調理場に飛び込んで来た。酒の飛び込みセールスである。
 いきなりこのお酒試飲してくださいと来た。目がぎらぎらした若者だった。何故か昔学生運動をしてた頃の友人達を思い出した。そういえば昔の仲間もこんな目をして いたなと懐かしさが親しみを感じさせた。
 彼が私のところに持ち込んだのは『久保田』という新潟の酒だった。
 こんな酒は初めてだった。水のようなさらさらした酒なのだ。会津の酒は甘ったるかったのが多い中、こんな酒が受けるだろうかとさえ思った。だが何か強く惹かれた。この若者は毎日閉口するほど私の店に通った。彼には取引頂くまでは梃でも動かないというような決意が感じられた。
 しばらくして彼が久保田の万寿と石川県の天狗舞の大吟醸の四号ビンを持ち込んで私たちに試飲させてくれた。飲んだ瞬間、どう表現してよいかわからないほど感激した。日本酒ってこんなに美味かったのか・・・。体の中に酔いと共に衝撃が走る感じがした。
 売り込みに来た若者、渡辺君に聞いた。「毎日こんな酒を持ち歩きながらそうやって営業しているの?」「ところでこんな酒誰か買ってくれた?」と言ったら誰も買ってくれないと言う。もう300件以上歩いていると言う彼が肩を落して語った。これが徳さんとの出会いだった。
 俺頭おかしいんだろうか?本気でそう思った。

| 01.親父の「ぼやき」 10月12日 16:00 | コメント(0) |

- 俺が籠太をはじめたわけ

 忘れもしない、居酒屋を始めた理由の一つにこんな思いがあった。
 懐石料理の店を始めたころ、調理場の若い者たちと今日は飲みに行こうなんてことがよくあった。
 しかし夜遅いせいもあるのだろうが、自分の飲みたい酒が行く先々の店にまったく無いのである、あるのはつまらない三増酒ばかり、当時日本酒を飲むと翌日ひどい目にあった、だからビールか水割しか飲まなかったものだ。
 おまけに肴が不味いときていた。よくいく店の人は私たちが料理人であることは知らなかったようで、店の人には文句一つ言わなかったし、また言おうとする若い者を静止した。
 しばらくはいい店を捜したのだがやはり無かった、あってもどちらかが欠けていた、やがてそれは不満となり心にやるかたない気持ちが蓄積してゆく。
 エーィ面倒だから自分たちで始めてしまえこれが籠太をはじめた大きな理由である。志も何ない不純な動機と言えばそうも言える。

 
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