雑木林の冬芽が大きくなる頃になると、奥会津の雑木林の記憶がよみがえる。
集落の入り口に置かれた道祖神、歩く人もない旧街道、その小高い山の上に雑木林が広がっていた、下草もなくまだ季節は初春、
雪が溶けた雑木林は冬芽が膨らみかけていた、
日あたりのよい枯葉の上で、青空を流れていく雲を眺めながら、仰向けのなり二人は自分達の夢を話していた。
この幸せが永遠のものと思っていた。それから暫くして二人は別れ二度と会う事はなかった。
雑木林には春の到来を予感させる暖かいさを感じさせる風が吹いていた。
風の記憶に導びかれ、30年ぶりに訪れた雑木林は昔のままであった。青い空流れる雲何もかもが同じまま
手を取り合って微笑んでいる道祖神が長い時間の流れをみつめている。そしてあの風が吹いている。
数年前から始まった風が体の中を吹きぬけていく感覚だけが昔と違う