| 03.親父の「お薦め」 10月13日 10:00 |

- 淡緑

 群馬の太田市にある島岡酒造、醸造石高500石の本当に小さな蔵だ。以前大田にゆき、島岡酒造の場所を300メートルくらい前のスタンドで訪ねたら、そこの若いあんちゃんが知らなかった。

 ここの酒に出会ったのは十数年前だろうか、まだ私の甥が酒販店をしていた頃に、「伯父さんこの酒いかがですか?」と私に持ってきてくれた。酸が良く出たワインのような酒だった。常温で飲むと微妙にひね香がする。しかし冷やして飲むと味のあるしっかりとした自己主張をした端麗さを醸し出す。

 市内の大手蔵の従業員に飲ましたら「これは腐蔵に近い酒だ」といって相手にもしなかった。ぬる燗は何とも言えない上品さを持って迫ってくる。しかも秋が好い、先日休みの日に、虫が鳴き声を聞きながら月がきれいな晩に縁側に座り、ゆっくりとする燗と呼ぶほどの微妙に暖かいぬる燗を飲んでみた。俺一人の至福の時だ(飲みたかったら籠太に来な・・)。

 日本酒って、もともとこんな味だったのではないかって感じがするのは俺だけだろうか。俺は新潟酒のあの端麗さも好きだが、どこかで求めている物が違うような気がしている。お客さんも様々な酒を試した後に、本当にお酒が好きな人はこの「淡緑」にはまってゆく。

 数年前に蔵元におじゃましたら、ちょうどお酒の仕込みの真っ最中であった。正直「何て原始的な作りなんだろう」と思った。しかも驚いたことに瓶詰めしたあと、ワインのように貯蔵して出荷するというこれはまるでライスワインだ。ここの初絞りときたら、酸が驚くほど出ている。この酸がこの蔵の特徴だと思う。本当はあまり人に教えたくない酒だ。

 おれの実家も、造り酒屋だったがこの環境変化に耐えきれず20年ほど前に蔵の歴史を閉じた。その後も市内からも様々な小さい蔵が消えていった。しかしこの蔵がめざしている世界は、そんな小さな蔵がこれからどうしたらいいのか、日本酒の業界に大きなメッセージを含んでいる様な気がする。知る人も少なく流行とも縁がなく。スターにもなれないだろうがこの蔵の姿勢にはただ敬服する。


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